こふんの雑記

日常生活でふと気になったことや、その他のことも色々書いていこうと思います。

2000年以上前から腐敗を免れて保存されてきた漢代の湿屍遺体

皆さんこんにちは。

今回は昔偶然知った遺跡のことについてお話していきたいと思います。

その遺跡の名は、「馬王堆漢墓(ばおうたいかんぼ)」です。

名前からして、日本の遺跡ではないことがすぐに分かった方もいるかもしれません。馬王堆漢墓は中国にある漢の時代の遺跡です。

ミイラの画像が出てくるので、苦手な方はすみません。

どうぞ、お楽しみください。

墳墓の場所と被葬者

馬王堆漢墓は、中国の湖南省 長沙市 にあり紀元前2世紀の頃に造られました。

東西に並んだ二つの墳丘で構成されており、初めに発掘された東側が1号墳であり、西側が2号墳となっています。

南側には1号墳の盛り土に覆われる形で3号墳があったようです。

 

被葬者は、前漢初期に長沙国の宰相をつとめた利蒼(り そう)とその妻子だそうです。

前漢 長沙の位置

前漢 長沙の位置

長沙国

(漢代に設置された諸侯の領地のこと)

宰相

(君主を補佐する役人たちの中で最高位の官吏のこと)

 

湖南省は下の地図ので塗られている範囲です。
長沙市緑の点がある場所にあります。

中国の地図 湖南省と長沙市

中国の地図 湖南省長沙市

ちなみに前漢は紀元前206年に劉邦により建てられた大帝国です。

劉邦

劉邦

前漢 初期

前漢 初期

辛追の遺体

この墳墓の何がすごいのか、それは被葬者である利蒼の妻、辛追(しん つい)の遺体の保存状態が極めて良かったことです。その肉体は、まるでさっきまで生きていたかのような弾力があったようです。

 

ちなみに、1号墳に葬られていた女性の名前が辛追であるということは、副葬品の中に「妾辛追」と書かれた印章が発見されたことから判明しました。

利蒼の墓とされる2号墳からは「利蒼」と刻まれた玉印や、「長沙丞相」と刻まれた銅印が発見されています。

辛追の遺体

辛追の遺体

このようなみずみずしい遺体の状態を、湿屍(しっし)というみたいです。

ミイラいうと、カラカラで干からびているイメージがありますが、脳、内臓といった臓器や血管や筋肉も水気を含んだ状態で残っていたというのがすごいですよね。

遺体を解剖して判明したこと

亡くなった年齢は50歳前後であり、生前多くの病気を患っていたことが分かりました。

内臓付近の動脈に多くの脂肪がついていたことから、生活習慣病を患っていることが判明しました。

肥満の人に起こりやすいとされる胆石症により、胆のうの中に石のような塊ができ、その胆石が胆管に詰まった時の痛みに、弱った心臓が耐えられなかったことが死因であると考えられるようです。

また、胃の中に真桑瓜(マクワウリ)というメロンの様な果物の種が大量に入っていたことから、亡くなった季節が夏であるということも判明しているようです。

 

副葬品の中には漆器や土器といった食器の他に、同じく漆器、土器、そして竹で編んだ籠といった容器の中に家畜の肉や骨、野菜、穀物が大量に入っていたことから、辛追は肥満になるのも伺えるぐらい、食にこだわりを持っていた人物であったことが分かりますね。

 

下の写真は湖南省の博物館に展示してある辛追の生前の姿を想像したものになりますが、辛追は生活習慣病になるくらい肥満体型であったようなので、少し現代風に美化しすぎなような気がしますね。太る前の姿なのかな?

辛追の生前の姿

辛追の生前の姿

ここまでの情報で、辛追の遺体の保存状態が極めて良かったことは分かりました。では、利蒼とその子の遺体はどうなのか?というと、残念ながらどちらも骨しか残っていなかったようです。

 

辛追の遺体はなぜ腐敗しなかったのか

馬王堆漢墓がある地域は湿度と気温が高く、遺体の腐敗を防ぐには条件がかなり悪い。

そんな環境の中にある辛追の遺体が、2000年以上もの間腐敗しなかった要因を調べてみると、以下のものがありました。

一号墳を上から見た図

一号墳の墓壙(ぼこう)を上から見た図

・遺体の棺が、深さ16mの気温が低い地下に安置されていたこと。

・遺体を洗浄し消毒した後に絹製の2枚の着物と18枚の布で遺体を覆ったことで、腐敗を招くバクテリアの発生を防いだ可能性があること。

・遺体は辰砂(しんしゃ)という水銀の化合物を含んだ液体に浸かっており、これがバクテリアの発生を防いだ可能性があること。

・遺体を4重の棺に入れて、その外側を木槨で保護し、それらを埋めるようにして周りを5トンの木炭で包む。さらにその周りを厚さ1mの粘土で覆う。その上に地上まで土を盛っていたこと。

棺を上から見た図

棺を上から見た図

遺体が腐敗しなかった決定的な理由は未だに謎のままだそうですが、上に挙げた遺体周りの環境が腐敗を防いだ可能性は高いそうです。

たしかにここまで徹底的に密閉状態にして、バクテリアや気温から遺体を守ったら、腐敗を防げそうな気がしますね。湿気が多い日本でも、同じように埋葬した場合、湿屍遺体が残るのかどうかが気になるところです。

まとめ

紀元前の遺体なのに、骨ではなく生身が残っているというのは現実味が無くて、不思議な気分になりました。ほんとよく残ってたなあと

ということで

以上、2000年以上前から腐敗を免れて保存されてきた漢代の湿屍遺体の話でした。

馬王堆漢墓は湿屍遺体の他にも、工芸品や帛書(はくしょ)・帛画(はくが)といった貴重な出土遺物が発見されていますので、もし時間があれば是非調べて見てください。